リップヴァンウィンクルの花嫁

3月某日。リップヴァンウィンクルの花嫁が公開されてから結構すぐに観に行った。
そして、これが私にとって一人映画デビューの日でもあった。
私は田舎の村に生まれたので幼い頃は近くに映画館もなく、車で一時間かけてやっとのことで観れるもの、映画は特別なものだった。
映画館で食べるポップコーンは一段と美味しく感じた。
いつも友達を誘ってポップコーンやチュリトスを頬張りながら観に行くのが楽しみで観に行っていたが、リップヴァンウィンクルの花嫁は兎に角早く観に行かなくてはという想いの一心で、映画館のポップコーンなどどうでもよくなった。メロンソーダだけ片手に一人入る。

わたしは新宿バルト9で観たけれど映画館へ向かう途中の道路を行き交う人達の声から「リリィシュシュ…「岩井監督…「リップヴァンウィンクル…」というキーワードが流れてゾクゾクした。
み、みんな観に行くひと?もしくはもう観終わったひと?
そう想いながら私の先を行く人もリップヴァンウィンクルの花嫁の席についた。ドキドキ。

3時間は結構あっという間だった。
私は映画館内で喜怒哀楽するほうだが、正直こんな違和感を覚えた映画はあまりなかった。泣いていいのか?悪いのか?笑ったほうがいいのか?わからなくなった。でも映画の内容が悪かったのだとかいうのは全くなかった。
心に突き刺さったままエスカレーターを降りる。映画館のお手洗いに入る。鏡で髪を結い直す。しばらくひとりになりたくて、ひとりで来て良かったなぁと思った。無だった。
観終わった後は何でか言葉にできない映画すぎて、一言で良かったなぁ。とも言えず悩んでいた。その日の晩、布団に入りリップヴァンウィンクルの花嫁についてもう一度考えた。ユーチューブで予告を見直す。ドキドキが止まらない。何だか今更ドキドキしてしまった。

変なの。

何だか、ずっと友達だった男友達からの一言メールを見て意識してしまったような気になり方。急に余計に気になりだして仕方なくなった。映画館でもう一度観たいなと思う映画はあまりないのに、リップヴァンウィンクルの花嫁は映画館でもう一度観たい映画にランクインする。

話は映画の内容に触れるが、映画の序盤はTwitterにも書いたけれど正直びっくりしてしまった。
岩井監督作品の過去作品は、私はレトロな、ノスタルジックなものを好むこともあってリリィシュシュのすべてや花とアリスを観て(昔に撮ったこともあるけれど)少女、服装、髪型など気にいる点が幾つかあった。勿論ストーリーなども。
びっくりしたところはPlanetという架空のSNSで七海がクラムボンという名前を借りて文字を打ち、知らない人と交流しているところ。それが今、岩井監督の最新作で上映されているところだ。
私はリップヴァンウィンクルの花嫁を観る前に、最近SNSが嫌だなぁと感じることが多かった。ジブリなどの映画は現実逃避ができて、例えば魔女の宅急便のようにニシンのパイを届けたり、草むらに寝転がってラジオをきいたり、承認欲求のために(とはオーバーな言い方かもしれないが)SNSをしている自分や私の周り人々が多いような気がしてうんざりしていた。
こんな数センチの液晶ばかりを見つめて皆電車の中ではスマホTwitterFacebook。LINE。
あ〜〜なんか嫌だなぁと思いリップヴァンウィンクルの花嫁を観に行ったからちょっとこれは観たくないな…とも思った。

でもこれは現実的な問題であり、岩井監督のインタビュー(?)にも書いてあり、ふむふむと後から思った。映画の中だけではなくて観ている私たちにも投げかけられた問題、というか文化なのか。
私は一番映画でここに引っかかったので、正直Twitterをやめようと思ったり今後のSNSとの関わり方について考えようと思っていた。

その矢先…まさかのあの架空のSNS、Planetがアプリに?ちょっとだけわたしもねこかんむりを被って知らない人とたわいも無い会話がしたいなぁと思って招待していただいた。

こうしてPlanetばかりやる日々にもまた嫌気がさしてきて、なんだかこのままいきなり消えてしまってもあまり覚えてもらっていないし、まぁいいよね。とも思いました。


でもでもTwitterをつくってしまったのです。
Planet用のメパロという架空の自分のTwitterを。

まだPlanetにいる皆さんの声も顔もわからないのに、あーでもないこーでもない、ご飯の話や好きなものを淡々と話してその人の口癖やよく使う顔文字、特徴やアイコンを覚え、愛着が湧いている今、なんだか少しはSNSで出逢ってくれてありがとうとも思う。

またPlanetで!はいつまで続くのだろうか。
そしてPlanetでつながった人たちと果たして会ったりするのだろうか。(28日は行かないので)
そしてはたまた、メパロという架空の人物を突き通すのか。答えがなくて楽しい新たな日常の一部になったPlanet。

ランバラルさんに会えるといいなぁ。


終わり。